卵巣腫瘍とは
卵巣腫瘍とは
卵巣にできる腫瘍や嚢胞(卵巣嚢腫)の総称です。多くは良性ですが、境界悪性(ボーダー)や悪性(卵巣がん)が含まれることもあります。
代表例として、機能性嚢胞(卵胞嚢腫・黄体嚢胞)、子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)、皮様嚢腫(成熟嚢胞性奇形腫)、漿液性/粘液性嚢胞腺腫などがあります。
初期は無症状で見つかることも多い一方、下腹部痛・腹部膨満感・尿意頻回、月経との関連症状がみられる場合があります。急な激痛・吐き気は卵巣茎捻転を疑うサインで、緊急対応が必要です。
主な背景・原因
- ホルモン変動:排卵サイクルに伴う機能性嚢胞は自然に縮小することがあります。
- 子宮内膜症:チョコレート嚢胞として卵巣に病変を形成。疼痛や不妊の背景になることも考えられます。
- 良性腫瘍の発生:皮様嚢腫、漿液性/粘液性嚢胞腺腫、線維腫など。
- 悪性化リスク因子:閉経後、家族歴(卵巣・乳がん)/遺伝(BRCA など)、急速増大、充実成分の増加。
- 妊娠中の卵巣腫瘍:偶然見つかることがあり、週数・サイズ・ねじれリスクを踏まえ妊娠継続と両立した計画を検討します。
必要な検査
- 問診・診察:痛みの部位と性状、月経・妊娠希望、既往歴・家族歴、増大スピードを丁寧に確認します。
- 超音波検査(エコー):嚢胞の大きさ・内部構造(隔壁・乳頭状隆起・充実成分)・血流を評価します。
- 性交経験のある方は経腟超音波が基本です。
※未経性交の方には配慮し経腹を基本、必要に応じ経直腸を検討します。 - 所見の評価にはO-RADS(超音波)やIOTAの基準を参考に悪性リスクを層別化します。
- 血液検査(腫瘍マーカー):CA125、HE4、CA19-9、CEAなど。ROMAスコアを補助指標として用いることがあります。
※腫瘍マーカーは診断の決め手ではありません(例:CA125は子宮内膜症でも上昇)。画像所見と総合評価します。 - 画像検査(MRI/CT):嚢胞の質的評価、充実部の判定、広がりや合併症(破裂・捻転)の評価に有用です。
当院にはMRI設備がございません。必要時は提携医療機関で速やかに実施し、画像・レポートは当院で丁寧にご説明します。 - 妊娠反応:年齢・状況に応じて確認します。
(原則)嚢胞穿刺は行いません:再発や播種のリスクがあり、診断・治療目的の穿刺は推奨されません。
治療の選択肢
年齢・症状・妊娠希望・サイズと所見(O-RADS等)を踏まえ、過不足のないオーダーメイド設計でご提案します。
- 経過観察(フォローアップ)
- 機能性嚢胞や小さな単純嚢胞は数週間〜数か月で縮小することがあり、定期エコーで安全に見守ります。
- 目安:5~6cm満・単純嚢胞・悪性所見なしで症状軽微の場合。
- 薬物療法
- ホルモン療法(低用量ピル/黄体ホルモン):機能性嚢胞の再発抑制、子宮内膜症性嚢胞の疼痛コントロールに有用です。
- 痛みにはNSAIDs等で対症管理。鉄補充は貧血合併時に併用します。
- 外科的治療(腹腔鏡/開腹)
- 皮様嚢腫・粘液性/漿液性嚢胞腺腫・増大傾向・破裂/捻転リスクがある場合、腹腔鏡下嚢腫摘出などを検討します。
- 子宮内膜症性嚢胞:年齢・AMH・妊孕性を踏まえ、“取り過ぎない”バランスで適応判断。術後は再発予防のホルモン療法を設計します。
- 悪性/境界悪性が疑われる場合は、婦人科腫瘍専門施設へ速やかに連携紹介し、病期診断・根治術をご案内します。
- 卵巣茎捻転(急な片側下腹部痛・吐き気)や破裂が疑われる場合は、緊急手術が必要になることがあります。迅速に高次医療機関と連携します。
妊娠をお考えの方へ
片側温存や妊孕性温存を優先します。腫瘍径・週数・捻転リスクを踏まえ、妊娠継続と安全性のバランスを取った計画をご一緒に設計します。
受診のご案内
下腹部痛・腹部の張り/急な片側痛・吐き気(捻転サイン)/月経とは異なる持続痛/検診で卵巣嚢腫を指摘など、いずれも評価の対象です。
当院では超音波と腫瘍マーカーを軸に迅速評価し、MRI/CTが必要な場合は提携医療機関で確実に実施します。
結果は当院で分かりやすくご説明し、腹腔鏡手術や腫瘍専門治療が必要な際は迅速に連携します。まずは24時間WEB予約またはお電話でご相談ください。
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