陰部のかゆみ(シニア期)— 外陰部の掻痒・膣のかゆみ・におい
陰部のかゆみとは
外陰部や膣周囲に生じるかゆみ・ヒリつき・しみる感じの総称です。
シニア期ではエストロゲン低下による乾燥(GSM:閉経関連泌尿生殖器症候群)や尿漏れ・パッド使用の刺激が重なり、慢性化しやすくなります。
放置すると掻破(かきこわし)・二次感染・生活の質の低下につながるため、早めの評価が大切です。
主な背景・原因
- GSM(閉経関連の乾燥・萎縮):膣・外陰の乾燥・かゆみ・性交痛・頻尿/尿意切迫。
- 感染症
- カンジダ膣炎:白いポロポロ状のおりもの、強いかゆみ(糖尿病・抗菌薬後で増悪)。
- 細菌性膣症(BV):灰白色でにおいが強いおりもの。
- トリコモナス・クラミジアなどのSTI:かゆみ+炎症・不正出血。
- 皮膚疾患・炎症
- 接触/刺激性皮膚炎:生理用品・パッド・洗浄剤・柔軟剤・香料・温水洗浄の当てすぎ。
- 硬化性苔癬、扁平苔癬、湿疹/苔癬化、乾癬 など。
- その他:ケジラミ・疥癬、神経障害性掻痒、薬剤(利尿薬・抗コリン薬による乾燥)。
- まれに:外陰上皮内腫瘍(VIN)・外陰がん。治りにくい/白斑・びらん・出血は注意。
必要な検査
- 問診・診察:発症時期、増悪因子(石けん・入浴剤・パッド・温水洗浄)、尿漏れ、糖尿病、薬剤、性生活・STIリスクを丁寧に確認します。
- 外陰・膣の視診:びらん・白斑・湿疹・苔癬化・色調変化を観察します。
- 膣分泌物の評価:pH・顕微鏡、必要に応じカンジダ/KOH、培養やNAAT(PCR)。
- 感染症検査:トリコモナス・淋菌・クラミジア(NAAT)、必要に応じて梅毒/HIVの血液検査。
- 血液検査:血糖(HbA1c)、鉄、ビタミンDなど。
- 皮膚生検について:当院では皮膚生検は行っていません。
硬化性苔癬やVINが疑われる白斑・しこり・非治癒性病変がある場合は、連携医療機関へ速やかにご紹介し、結果は当院でわかりやすくご説明します。
治療の選択肢
原因・重症度・併存症(糖尿病・尿漏れなど)に合わせ、負担の少ない順にご提案します。
- ケアの見直し(全員の土台)
- 洗いすぎを避け、ぬるま湯+低刺激の保湿をする(ワセリン/保湿クリーム)。
- 温水洗浄は短時間・弱圧、香料入り石けん/入浴剤は回避する。
- 綿素材・通気性の良い下着、締め付けの強い衣類を避ける。
- パッドはこまめに交換し、湿潤環境を減らす。
- GSM(乾燥・萎縮)への治療
- 局所エストロゲン(膣坐薬/クリーム):乾燥・かゆみ・性交痛・反復膀胱炎の改善。既往により適応を慎重に判定します。
- 膣保湿剤・潤滑剤の併用。
- 感染症の治療
- カンジダ:抗真菌薬(外用/内服)。反復例は糖代謝・抗菌薬使用・ケアも同時に見直し。
- BV・トリコモナス:メトロニダゾール等。トリコモナスはパートナー治療も重要です。
- 皮膚炎・硬化性苔癬
- 中〜高力価のステロイド外用で炎症・かゆみを鎮静、維持療法へ移ります。
- 必要に応じタクロリムス等の免疫調整外用(長期のステロイド回避に)。
- 生検が必要な所見(白斑が拡大・びらん/潰瘍・難治・結節など)は、連携医療機関に生検を依頼し、以後の治療設計を当院で継続します。
- 掻破の悪循環を断つ工夫
- 就寝前の保湿・冷却、かき壊しが強い場合は短期の鎮痒薬を慎重に服用します。
- 寄生虫・その他
- ケジラミ/疥癬は適切な駆虫治療と家族・寝具の対応を指導します。
- 関連症状の管理
- 尿漏れが背景なら、骨盤底筋トレーニング・膀胱訓練・薬物なども合わせて整えます。
お薬は最小限で最短を基本に、原因治療+スキンケアで再発しにくい状態づくりを重視します。
生検が必要な疑いがあればためらわず連携手配し、結果説明から治療計画まで当院で丁寧に対応します。
受診のご案内
次のサインがあれば、どうぞお早めにご相談ください。
・2週間以上続くかゆみ/夜も眠れないほど強いかゆみ
・白斑・色調変化・出血する傷・しこりがある
・再発を繰り返すカンジダ、においの強いおりもの、性交痛
・尿漏れによるただれや、糖尿病/免疫低下などの基礎疾患がある
当院では、視診・分泌物検査・必要な感染症検査を軸に、ケア指導・局所治療・感染治療・皮膚疾患の外用治療までをわかりやすくご提案します。
皮膚生検は連携医療機関で実施し、結果は当院で丁寧にご説明。初診から再発予防まで、きめ細やかにサポートします。
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